心に敵を作りつづける私たち【コラム|感じるために生きている】

みなさんの多くもそうだと思いますが、私の子どもの頃にも当たり前に小学校から学校にイジメがあって、私自身も同じクラスの仲良しの女の子たちから、2,3ヶ月いじめられて、毎日家に帰ってから泣くような経験したことがあります。

一刻も早く、私をいじめるのに飽きてもらいたいので、意地でも毅然とした態度でいることだけに集中して毎日をじりじりと過ごしていましたら、ある時ふと、いじめる女の子たちの身体から沸々と湧き出る苛立ちを感じました。

また、この頃には、私もそれぞれの家庭に難しい事情などがあることも理解し始めていて、みんなもきっと不安なんだと、言葉にならないような事を考えて、仕方なく諦めてその時期をやり過ごしました。

大学生になって、イジメも一段落したかとほっとしたのも束の間、バイト先のデパートで酷いイジメがあって新入社員が先輩社員に泣かされているのをよく目にしました。

大人になってもイジメは続くのか…。

その現実を目の当たりにして、ひどくバカバカしいと感じると共に、心の底から落胆して疲れてしまいました。そして、私にはその理由がもはや謎でもありました。

なんで戦争が起こるのか?
どうして浮浪者のおじさんがいるのか?
なんで飢餓で苦しむ子たちがいるのか?

日常のイジメと、こういう社会問題は同じことのように思えました。それ以降、人の心の謎について考え続けていると思います。

Photo by Martin Sanchez

私たちは意見の違う相手を敵に仕立て上げてしまう

世界中のほとんどの人は「幸せになりたい」「平和な世の中がいい」と思っているはず。世界にある様々な課題をなんとかしようと人や組織が奮闘しているのに、一方でいじめも戦争もなくならないどころか、日本の自殺率の高さをみると、益々煮詰まっている気がします。

課題解決型では根本的に変われないのでは?とうっすら気づきはじめていたところに、私の人生でやっと希望がもてそうに感じるコミュニケーションの技術と出会いました。

本のタイトルは『NVC 〜人と人との関係にいのちを吹き込む法〜』です。

NVC(Nonviolent Communication)は、日本語では<非暴力コミュニケーション>と言われ、実際の内容とちょっと印象の差を感じます。ケンカ対策とかいったことでなくもっと身近に使える方法で、本の帯には<暴力や対立を、互いがおもいやる機会に変える方>とあります。

例えば、酢豚にパイナップルが入っていたとします。それが嫌いでイライラする人もいれば、喜ぶ人もいます(私も大好き!)。これは起こる出来事が同じだとしても、人によって反応が違うということです。パイナップルが入っているのが悪でもないし、その店がひどい店でもなく、自分の中に怒る原因があるということが分かると、イライラで消耗することなくなります。例えば今後、その店では酢豚を頼まないとか、パイナップルを抜いて欲しいと頼むなど、気持ちが落ち着くことで、自分を大事にするための選択にエネルギーが使えるようになります。

Photo by Tamara Menzi

日常の中で、私も身近な人とぶつかることがあります。でも、望む未来が同じ方向なのだとしたら、やり方の違いで終始したくはありません。酢豚のパイナップルを思い出してください。私が言われて不愉快になった言葉を別の人が聞いたら、全員が私と同じような反応をするわけじゃありません。イライラする理由は自分の中にあるのです。かといって、イライラするような負の感情と言われるような気持ちも決してダメでなく、どの感情も大事なエネルギーで良い悪いはありません。それらの感情の奥に耳を澄まし、自分の本当の願いに繋がることこそが、敵を作らない技術そのものなのです。

パイナップルの事だけを聞くと簡単に思われるかもしれませんが、これが実際自分のこととなると、私たちは急に敵を作りはじめてしまいます。

「アイツが悪い」

この「アイツが悪い」の先に、戦争があります。

この連載のタイトルは『感じるために生きている』ですが、このようにNVCはまさに感じる技術と言えます。この技術をもっている人が増えると、社会の事の運びがスムースで、人が生きやすくなると思います。あなたも、是非学んでみてください。

アースガーデンの母が書くコラム「感じるために生きている」