街に下りてきたフェスティバル。10年先を見て、自分も進化する|B-SAN / CIRCUS VINTAGE 細谷あつし #フェスティバルってなんだ

アースガーデンを昔から支えてくれている出店者さんの一人、細谷あつしさん。固定店舗を持たずに、フェスティバルやイベントを回るスタイルで、エスニックファッションのお店『YOKOHAMA IRIE MARKET』を2004年に立ち上げました。

あつしさんは、時代ごとのフェスティバルの変化を敏感に感じ取り、自らも変化させていきます。2010年にはビーチサンダル専門店『B-SAN』をスタートし、2013年からはB-SANに専念。今年はビンテージウェア専門店『CIRCUS VINTAGE』もはじまり、忙しい毎日を送っています。あつしさんは、どんなことを考えて、お店を進化させてきたのでしょうか?

時代にマッチしていなければ売れない

「フェスティバルは衝撃的に変化してきたと思います。昔は『一般社会に溶け込まない』と言わんばかりに奇抜なスタイルや、アンダーグラウンドな雰囲気の人がたくさん来ていました。こんな髪型でどんな仕事ができるんだ?って不思議でした(笑)」

山の中から街に下りてきたフェスティバルには、普通のカップルや家族連れが来場するようになりました。来場者さんの多様化はアツシさんのお店にも変化をもたらします。

「エスニックファッションが当たり前だったフェスティバルに、どんどんアウトドアギアが浸透して、新しいフェスティバルファッションが生まれました。ゴアテックスのジャケットには、エスニックの小物を合わせづらい。時代は変化しているんだから、俺達も変化しなきゃいけないと考え始めました。どんなに良いものでも、時代にマッチしていなければ売れないと思うので」

10年先を見る

時代が変化しつつあってもYOKOHAMA IRIE MARKETで変わらず売れていたものがありました。それがビーチサンダル。

「当時、日本でビーチサンダルの製造・販売・卸を総合してやっているブランドはほとんどありませんでした。いけるかもって思ったんです。いろんな人に相談する中で『B-SANは丁寧に粘り強くやれば大きく成長できると思う。でも、常に10年後を見ていなきゃダメ』とアドバイスをくれた人がいた。これから新しいこと始めようとしているのに、10年後なんて想像できないですよ(笑)。でも『10年後を見る』という言葉はずっと引っかかっていたんです」

実際に、B-SANには多くのファンがつきました。フェスティバルの出店だけでなく、卸や注文なども含めて、年間3万足のビーチサンダルを売ると言います。靴を3万足売るというのは、業界でも驚くべき数字だそう。春から秋にかけては多忙を極め、15kgも痩せてしまうんだとか。

朝霧JAMでも受け入れられたビンテージウェア

「でも、冬になると暇になります。毎年『10年後』について考えていました。今年でB-SANを始めて8年で、10年後が見えてきました。ビーサンの販売ペースもつかめてきて、新しいことを始める余裕も生まれました。そんな中でスタートさせたのが『CIRCUS VINTAGE』というビンテージウェア屋です」

あつしさんが中学生の頃、日本は第二次古着ブーム。あつしさんも古着にドハマリし、自分で知識をつけ、バイヤーもこっそりやっていたようです。

「俺が扱っているのは、古着と言ってもリサイクル衣類ではなく『着る骨董品』と言えるようなビンテージウェア。仕入れに知識が必要な、素材やギミックにストーリーのあるものばかりです」

買い付けのルートは、過去の経験を活かした独自のもの。アメリカに仕入れに行くのではなく、YOKOHAMA IRIE MARKETのころから通いつめたタイで、ヨーロッパのワークウェアやミリタリーものを中心に集めています。

「ファストファッションが盛り上がっているからこそ、ビンテージウェアのストーリーが再評価されているんだと思います。お客さんと話をしていると、ファストファッションはつまらない。でも、ラグジュアリーブランドにはなかなか手が出ない。そんな人たちに古着が受け入れられているようです」

『CIRCUS VINTAGE』のフェスティバルデビューは、アースガーデンが運営している朝霧JAMのフリーマーケットエリアでした。キャンプフェスティバルにビンテージ古着が受け入れられるか心配もしたようですが、蓋を開けてみれば大盛況。

「フェスティバルに来てるお客さんから見たら、マーケットはコンテンツのひとつ。買ってもらえるってことは、コンテンツとしても評価してもらえてるってことです。お客さんがワクワクするような出店をこれからもしていきたいです」

変わりゆく時代、変わりゆくフェスティバル。きっとこれからもどんどん変わっていくでしょう。そして、あつしさんは10年先を考えながら、これからも臨機応変に変わっていくのだろうと思います。でも、変わらないこともあります。フェスティバルへ遊びに来るお客さんが、あつしさんのブースで笑顔になって帰っていくこと。夏も冬も楽しませてくれるあつしさんのブースを、様々なフェスティバルで探してみてください。

写真:須古恵

earth garden “冬” 2019
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