<Interview>青柳拓次がファシリテートする参加型コンサート「CIRCLE VOICE」とは

様々な人々が一つの場所に集い、生の声を響き合わせる参加型のコンサート「CIRCLE VOICE」がNatural High! で開催される。これをファシリテートするのが、Little Creaturesの青柳拓次だ。おそらく、今回のNatural High! を象徴する時間になるだろう。Natural High! が何をしたいのか、何を伝えたいのか、そんなことも想像しながら読んでほしい。

きくでも、おどるでもない。
みんなでうたうことで、にじんでいくせかい

音楽の楽しみ方が偏っているのでは

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音楽を大きく分けると、演奏者と聴衆が別れているもの、伝統的な祈りや神仏に奉納するもの、演奏者と聴衆の隔てがなく本人たち自身が音楽を奏でて楽しむものと3つあって、それらが複合していたりすることもあるけど、CIRCLE VOICEは3つ目にフォーカスを当てています。自分っていう楽器をならしてアンサンブルをつくっていくという体験です。

photo by 田中トシノリ
photo by 田中トシノリ

ライブの音源を収録したアルバムの中で、演奏中にお客さんが歌い出し、演奏する側が音を止めて、声だけになる瞬間がありますよね?あれが、大好きなんですよ。そういう箇所にすごく感動するんです。お客さんが演奏者の曲を乗っ取ってしまうくらいのあの空間の勢い。

大人になるとそもそも歌ったり、大きな声を出すことがないですよね。カラオケぐらいでしょうか。基本的に音楽は“ 聞く”という感覚が強いと思います。でも地球上には、日常的に歌が存在する地域がいっぱいあるんですけどね。日本、とくに東京だとなかなかないですね。

いろんな国を旅して、もっと多面的に音楽は楽しめるものなんだと考えるようになりました。今までの自分は、自分の音楽をシェアする方法が、演奏する・聞いてもらうという関係性に偏りすぎていたかも、と思ったんです。バリ島では、しょっちゅう村の祭があって、雨が降っている中、みんなで神にお祈りしながら歌ったり。フランスの田舎に行ったときは、クリスマスにみんなで一緒に歌を歌いました。

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どれが良いというわけではないけど、みんなで歌うということがあまりにも少ない。だからこそ、みんなが歌うっていうのはどんな体験なのか、体験したあと自分の感覚にどんな変化が起きるのか、そういうことを知るのは面白いと思ったわけです。

あらゆる溝を越えていく

photo by tomovsky*@GOOD NEIGHBORS JAMBOREE
photo by tomovsky*@GOOD NEIGHBORS JAMBOREE

日本でいうとラララとかルルルのようなものです。ハワイならエアエアー、ユダヤの人ならボイボイボイボイって歌うんですが、スキャットって世界中にあるんですよ。これを耳に聞こえた通り真似すれば、どんな国の人とも一緒に歌が歌えるツールになるわけです。

福島に若者向けの新しい複合施設ができるということで、住民へのワークショップとしてCIRCLE VOICEを開催しました。参加者の中高生だけでなく、役場の職員さんにも参加してもらったんです。前後のプログラムがあったこともあって職員さんたちは会場の端でメモを取ったりしていました

最初は、いったい何が起きるんだろうって不思議そうだったんですが、「じゃあ、みなさんもこっちに」って呼び込んだら「えっ?」って。まさか自分たちもやるとは思ってなかったでしょうね(笑)

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「やろうぜ!」というよりもフラットなかんじで「はい、入ってください~」って誘導したら「あ、俺もやるんだ?」みたいになって、気づいたらみんなで歌っていました。きっかけさえあれば、みなさん参加してくれるんですよね。自然と子どもたちと手を繋いだりして。

台湾でもやってみましたが、うまくいきました。本当に言葉はいらないなと。

とけてゆく、にじんでいく

中に入ると分かるのですが、一人一人の声が大きくなっていって、最後には本人自身の声が聞こえなくなってくるんですよ。自分の出している声が周りの声にとけてしまうような、自分がアクションを起こしているのに自覚できないような状態です。

人間の脳には右脳と左脳があって、右脳が直感的なこと、クリエティブなことを担当しているわけですが、右脳に人間の意識が偏っていくと、他者との境界がなくなって、にじんでいくような感覚になっていくそうなんですね。こういうことが音楽を通じて体験できるのではないかと思います。

表現者ではなく、ファシリテーター

photo by 田中トシノリ
photo by 田中トシノリ

CIRCLE VOICEの中での自分の役割は、表現者ではなくファシリテーターです。歌の渦をつくることに専念します。新鮮な響きや、面白いリズムのほうが参加しているみなさんにとっても楽しい場になりますから、簡単すぎず難しすぎず、ちょっと達成感のあるような場を作っていきます。

場が盛り上がってきたら、僕自身は下がっていくようにしています。自分も輪に入ってみんなと同じように声を出してみたり、しばらく見惚れていたり。そこにいることがすごく幸せに感じます。道志の森もすごくいいCIRCLE⦆ VOICEができそうな気がします。ぜひ、たくさんの人に参加してほしいです。

青柳拓次

s_青柳拓次 CIRCLE VOICE(サークルボイス)

1971年12月8日、東京。クラシック・ギタリストの家系に生まれる。幼い頃よりギターを手にし、ピアノ、パーカッションを学ぶ。

1990年、TVのオーディデョン番組を経て、Little Creaturesでデビュー。

1991年、渡英。一年間のイギリス暮らしのなかで、世界中から集って来た音楽家たちの生音に出会う。帰国後、Double Famousやソロ名義のKAMA AINA、青柳拓次などでも数々のアルバムをリリース。KAMA AINAでは、イギリス、デンマークのレーベルよりアルバムをリリースし、ライブ・ツアーを行う。シチリア、ハワイ島の音楽集や、パリ地下鉄のミュージシャン達によるアルバム、ファッションデザイナーとのコラボレーションMix CD、様々なアーティストのプロデュースを手掛ける。映画や舞台、TV番組の音楽を作曲し、詩人、写真家としても作品を発表。

2010年、沖縄に移住。日本各地の民謡とホリスティックなセラピーを学ぶ。2013年、新たなるプロジェクトとして、輪になり声が渦を巻く、参加型コンサート”CIRCLE VOICE”を沖縄のヤンバルからスタートさせる。2016年、絵本「かがり火」、UA「Japo」(プロデュース)、Little Creatures「未知のアルバム」を発表。それぞれ全国ツアーを実施。

http://www.takujiaoyagi.com/