暮らしやすい社会って?世田谷区長 保坂展人が語る「地域主導によるエネルギー革命」

2011年3月11日の東日本大震災/福島原発事故からわずか 2ヶ月も経たないうちに、全国初の「脱原発首長」として世田谷区長に就任した保坂展人さん。これまで 展開してきた、革新的なエネルギー政策は、めざましいものがある。エネルギーの 転換を進める上で、世田谷区の具体的な活動を教えてもらいに保坂さんを訪ねた。

世田谷区長 保坂展人
地域主導によるエネルギー革命を

保坂「一言で言えば『変えられる』という実感を持ちましたね。『変わらない』政治や社会、システムが多いなか、自治体という規模だからこそ『変えられる』ことが多いと思っています。」

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世田谷区のエネルギー改革

東京電力に頼り切っていた区有施設の電力を競争入札にして、新規参入を促した 「PPS(新電力)」の導入は全国で話題になった。同時に PPS の制度も広く知れるように。現在は区役所など大型の施設で使ってている電気の8割をPPSでまかなっているそうだ。

保坂「PPSを導入しない場合と比べると、今年度は1億円の差が生まれると試算が出ています。だから1億円の行政改革。でもこれは経済産業省が推奨して何とか世に広げたかった仕組みをただ使っただけなんです」と保坂さんは笑う。

また処分しようと売りに出していた、神奈川県三浦市にある世田谷区の区有地を太陽光発電所にしてしまった「世田谷区みうら太陽光発電所」。太陽光発電のリース業者との契約で始めたので初期投資ゼロ。つくられた電気は競争入札で売り、東 電より高く買ってくれるところが現れたそうで、売電費からリース料を引いても、年間400~500万円の売り上げが見込めるという。

次に「世田谷ヤネルギー」は、都内最大の人口(88 万人)が住む世田谷区で、一戸 建てや集合住宅、事業所などの屋根でソーラーパネルの設置を推奨し、しまいには 世田谷区を発電都市にしてしまおうという試み。いくつかの業者と相談して、安く、 簡単に導入できるようなシステムを構築した。

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保坂「2年前にこれを出したときには大反響で 。今年の3月末時点で、4500件に到達しました。実質、3年で倍増したことになります。」さらに保坂さんが進めているのは、集合住宅のベランダで太陽光発電を促す「ベラルギー」。現在、システムを模索中とのこと。

さらなる電力自由化に向けて

いよいよ国会で「電力小売りの全面自由化」が成立しそうな段階に来ている。自然 エネルギーでつくった電気であれば、高くても買いたい人は少なくないと保坂さんは みている。太陽光だけでなく、風力や小水力も含めた自然エネルギーを供給する事業者も増えてくるはずだ。世田谷区でもエネルギーベンチャーを起業する人も出てきているという。

保坂「これから必要なのは、大規模集中から小規模分散です。311を境に多くの人たち が生活を変える必要性に気付きました。生活に密着したエネルギー転換を進める 上で、鍵は自治体にあると思っています。」

保坂さんは、自治体をベースに企業や研究機関、また市民を含めた講演会や勉強会にも精力的に参加している。エネルギー転換の輪を広げようとしているのだ。

暮らしやすい社会とはどういうものか。どうすれば人や環境にストレスをなるべく与え ない社会をつくれるのか。 アースガーデンが事務局となって活動してきた、震災復興とエネルギー転換を目指す社会的プロジェクト「ピースオンアース」でも、上記の問いに答えるべく、さまざまな垣根を超えて手を取り合っていこうと計画続行中だ。