ユニバーサルデザインと国産木材!人にやさしい箸を作る「箸factory宮bow」

ユニバーサルデザインなんて、横文字を使わなくても「愛bow」という名前から人への優しが伝わる宮保克行さんのお箸。一度は諦めた木工の道に、様々な縁でもう一度戻り、一歩ずつ進み、今では夢は宇宙にまで広がっている。どんな形でもやり続けるという意志が大事なんだと改めて思う取材でした。

ユニバーサルデザインな国産木材のお箸

箸の生産が日本一である福井県で、ユニークなデザインが特徴の国産材にこだわった箸を作っているのは、箸factory宮bowの宮保さんだ。宮bowの「bow」は、Rainbowの「bow」とかけている。虹は雨が作る架け橋ならば、宮保が作り出すお客さまとの架け橋は「宮bow」という思いが込められているそうだ。

宮保「宮bowの箸は、主に国産の樫の木を使って作っています。漢字を見て分かる通りとても堅い木です。加工しにくいんですが、使っていても変形しにくく、長持ちします。

口にするものを作っているわけですから、国産の木材には強いこだわりがありますね。輸入材では、手元に来るまでの間に薬品をかけられている場合もありますし、どこから来る材料かも分からない。その木材を切られることによってその森がなくなっていることもあるかもしれません。

地元の製材屋さんを中心に、信頼出来る木材を使っています。」

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箸を中心に、木製のスプーンやお皿、iPhoneケース等も作る。そういった作品の中でも特に目を引くのが、障害をもつ方のために作られたトングのような箸。その名も「愛bow」というが、実はこのお箸づくりが宮保さんの人生を大きく変えることになる。

お箸に困っている人がたくさんいるのではないか

宮保「大学では木工の技術を学んでいたので、卒業後はそれを仕事にしていました。3年勤めましたが、仕事だと自由には作れませんし、納期や予算も厳しい。もっと自由にモノづくりがしたいと思い、転職しました。

趣味としての木工は続けていきたかったので、次の仕事はお酒作りを選んだんです。お酒作りって冬の仕事なんですよ。冬は、月に休みが2、3日ぐらいしかないほど集中的に働いて、夏には夏休みが2ヶ月ある。だから夏に創作活動を続けることができたんです。

そんなある日、知人の紹介で一人の障害を持つ方と出会いました。普通のお箸では上手く食べれないということで、オーダーメイドのお箸をつくることになったんですね。密着させてもらって食べ方、持ち方を研究した。それでこの方に合うお箸を完成させたとき、こうしてお箸に困ってるひとが世の中にたくさんいるんじゃないかと思って。

それで、酒造を辞めて箸作りをはじめたんです。最近では、外国の方にも使ってもらえるのではないかと思っています。」

その後「愛bow」は持ちやすさ、軽さ、動きやすさなど、少しずつ改造されアップデートされてきた。最新作は日経新聞にも掲載されて、全国から問い合わせがきているそうだ。

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宮保「今、とても宇宙空間に興味があります。最終的には、自分のお箸を宇宙に跳ばしたいですね。宇宙飛行士の方に使ってほしいんですよ。宇宙食はつまんで食べるらしいので、恐らく、お箸らしきものは使ってるんじゃないかと。野口聡一さんに聞いてみたいですね。」

一度は諦めた木工の道に、様々な縁でもう一度戻り、一歩ずつ進む宮保さん。今では夢は宇宙にまで広がっている。どんな形でもやり続けるという意志が大事なんだと改めて思う。芽が出なくて苦しい人は、宮保さんのお箸を使うといいかもしれない。毎日使うお箸、ごはんを食べるたびに決意を思い出すことができるから。