食べるものも生産し、生活をよりシンプルに。「DrILL」が掘っていく進化と変化

アースガーデンを始め、様々なフェスの会場でもおなじみ「mash」はヘンプを中心としたナチュラルアパレルブランド。ネパールで生産された、独特なシルエットと色使いの服は、一目で mash と分かる。その路面店「DrILL」が、三軒茶屋から浜松に引っ越したのは、去年の秋のこと。突然の移転に、正直驚いた。寂しがる東京近郊のファンも多かったことだろう。それを象徴するように閉店セールには平日休日関係なく、多くの人がお店を訪れた。

DrILLが掘っていく進化と変化

大好きな場所を棄て、移動して再構築したかった

なぜ DrILL は引っ越したのか、代表の松岡さんにお話を伺った。

松岡「震災後、自分には何ができるんだろうとみんなそれぞれ考えたと思います。瓦礫や汚泥処理の手伝いへ行く人、物資を届けに行く人など素晴らしい方々を目にしました。だだ、僕の場合は、爆発した原発が恐ろしくて恐ろしくて体が拒絶してしまったんです。そして、いくら大好きな場所でも棄てなきゃならない出来事が起きてしまったんだと。この負のエナジーをプラスに変えるために、自分自身が大好きな場所を棄て、移動して再構築するしかないと思いました。まずは冷静に考えられるトコロまで。」

実際、3.11のあと、西に引っ越した人は多い。アースガーデンのまわりいるような感度の高い人は特にその傾向が顕著だった。多くの人が九州や沖縄などなるべく西を選んだに対し、DrILL は、転居先に浜松を選んだ。大地震が起きると言われ、原発もある。3.11を受けての引越しであることを考えると決して最適解でないことが分かる。

浜松でゆっくりと育つ新しい DrILL

松岡「移動の前にスタッフ全員に確認をしました。クリエイションを続けるのか。まつりをまわり続けるのか。答えはYES。じゃあどこか。山か、都会か。はたまた島なのか。 答えは攻めの体制が取り続けられる場所だと。火山列島、原発天国のこの国はあ る種どこに行ってもその影響を受ける。じゃあ真ん中なんじゃないかと思ったんです。 東海地方は真ん中ならではの朗らかさと、百姓一揆を起きた激しさが同時にある。そして、なんといっても天気がいいんですよね。」

ただただ、DrILLらしいなと思った。メジャーに決して媚びることのない、オンリーワンのデザイン、色使い、攻めの姿勢はお店選びにだってもちろん反映されているのだ。思えば、三軒茶屋店だって、攻めのお店だった。ブラブラしているだけでは決して辿り着くことのない、むしろ目的意識をもっていってもたどり着けないぐらい普通の住宅地に突如として現れる店。僕が初めて行ったときは 20 分ぐらいまわりをグルグルしていた(笑)

松岡「正直、売り上げはよくないですよ(笑)でも、はじめからリスクを想定していたら体が動かなくなるのもわかっていたので、しょうがない事と決めています。さらに、こっちに引っ越すと同時に免許取消になってるんで、誰かいないと動けないのが辛いところ。代々木公園の出店の時も夜泊まるとこがないですし(笑)」

浜松の新しいお店は、大きな一軒家をリビルドして作られている。和室を改装した店舗部分は「mash」はもちろん、セレクトもの、ネパール・インド的な小物類がならぶ。床の間や縁側など和のカルチャーがDrILL色に染まっている。また、お店とは区切られた客間のような部屋もあり、仲の良い友人やお客さんがよく泊まりに来るそう。2Fは将来的にカフェスペースとしての利用を視野に入れて、設計されている。

長年かけて作ってきたDrILLコミュニティが集う場として、これからも益々パワーアップしていくだろう。洋服を見て、着て、お店の人と話して、お客さん同士で話して、共に飲みながらコミュニティを作っていく。これも地方だからできることかもしれない。こんなに大きな一軒家、東京で借りようと思えばかなりの家賃。しかも 、中を大きくリビルド可能となるとますますないはず。店の近隣には、波長の合う雑貨屋や飲食店もあり、これから面白くなっていく予感。

松岡「メインの生産国であるネパールにも拠点を構え、シフトを組んで移動して暮らしていきたいんです。自分たちの食べるものも生産し、生活をよりシンプルにして。「どこでも適応させられる」とはとても傲慢な考えですが実践してモノにして行ければと思います。」

目指す先はいわゆる「アパレルブランド」ではない。どんな進化と変化で私達を楽しませてくれるのだろう。