【インタビュー|井上ヤスミチ】子育てを仕事に活かすイラストレーター

最近はイクメンという言葉が聞き飽きるほどメディアに登場し、お父さんももっと家事、育児に参加しようという社会の流れは常識になりつつあります。

私たちの回りにも、日々、子どもたちとの生活に試行錯誤しているお父さんがいます。画家・イラストレーターとして活躍する井上ヤスミチさんです。数年前までTシャツ屋として様々なフェスに出店していたので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。お子さんが生まれたことを機に、出店で全国を飛び回る仕事から、家でできるイラストレーターの仕事にシフトしました。

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理想と現実は当然違う

「助産師の妻と、小学校4年、1年、1歳半の3人の子どもたちとの5人暮らしですが、それはもう大変です(笑)。特に、長男・次男は本当にやんちゃで、2人が小さい頃は、目を離すと、それぞれが真逆の方向に全速力で走っていったり、イベント出店では泥だらけの格好で売り物に突っ込んで行ったり、そりゃもう。

 漁師さんみたいに、朝早く起きて仕事して、早めに上がって子どもたちを保育園に迎えに行こうとイメージしていたのですが、日の出と共に起きだして兄弟げんかが始まったり、それで起きてしまう妻や一番下の子のフォローをしたり、朝は何もできません(笑)」

そんな日々の育児は、イラストレーターの仕事に大きな影響を与えていると言います。

「例えば、エクステリア全般を扱う会社が『庭木の剪定のチラシ用に子どもも交えたイラスト』を発注してくれたのですが、そのときは、子どもが植木屋さんの仕事に見入って、手に持ったジョウロの水がこぼれてしまっている描写を入れました。細かい部分ですが、子どもと接していればこその絵で、それを見て頬が緩む人もいるかと。」

子育て家族を応援するお庭屋ガーデンソト チラシ用イラスト
子育て家族を応援するお庭屋ガーデンソト チラシ用イラスト

完成度よりも、自発的に取り組むこと

また、最近は、子ども向けの絵や工作のワークショップの依頼が多いといいます。

「子どもに絵を描いてもらうワークショップは、なかなか難しい。きれいに描きあげることを目的にすると、子どもへの指示になってしまう。親御さんも『ここにお花を描いたらどう?』なんて先回りの口出しをしてしまったり。幼児~小学校低学年が対象となるワークショップが多いのですが、そこでは完成度よりも自分がいかに自発的に取り組めるかを大事に考えています。

『いつもはもっと上手に描くんです』って、お母さんは納得いっていなくても、子どもは夢中で描いている。それはすごくいいことなんです。大人の思うようにまとまっていなくても、本人は得意げです。出来上がったものを一緒に見ながら、なにを考えて作ったのか、どんな工夫をしたのか、話を聞くとたくさん教えてくれるでしょう。とりあえずやってみてその結果どうなったかという経験が、次の自発的なもの作りに繋がると思います。絵や工作だけでなく、服でも料理でも日々の笑い話でも、できあいのものを利用するだけでなく、自分で作ること工夫することの楽しみを知ってほしい。

ワークショップに限らずですが、大人が先回りしてスマートな方法を教えてあげることで、子どもたちが失敗する経験を奪ってしまっている部分があると思います。社会全体として、待てないんでしょうね、忙しいから。例えば、靴を履かせてしまうより、履こうとしているなら自分で履けるまで待ってあげたい。とは言え僕も待てないことが多いですけど(笑)」

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絵を描くことから見えてくる、親子のコミュニケーションの疑問点。それは日本が抱えている閉塞感ともつながっているかもしれません。

やすみちさんは、子どもの自主性に合わせつつ、ぐちゃぐちゃになり過ぎないように誘導もしながら、楽しい場を作るのがすごいところ。今後のワークショップの予定や作品などはウェブサイトをチェック。