【コラム|セネガルの生活】街中で始まるダンスサークル「サバール」

こんにちは。青年海外協力隊員として、西アフリカ・セネガル共和国の北部に位置する地方都市で活動させていただいている、山口織枝です。

今回は、セネガルでは恐らく誰もが知っている、「サバール」というダンスの集まりに行った際のことを書かせていただきます。

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とある日曜日。近所で果物を売っている商店の友人のところに行ったら、彼女が「今日は夕方サバールがあるよ。」と教えてくれました。「サバール」とは、タムタムと呼ばれる太鼓と、その太鼓をたたく催しを指す言葉です。セネガルの人たちは踊りが好きで、何かと催しもので、また日常的にも、踊っている姿をよく見かけるのですが、この「サバール」でも、太鼓に合わせて、主に女性たちが踊ります。

このサバールという太鼓に合わせて踊るセネガルのダンスを「サバールダンス」と呼んだりもするようです。(セネガルで広く話されているウォロフ語で「フェッチ(踊り)サバール」と言っているのを聞きます。)

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友人が誘ってくれたので、たまに街角で見聞きしていたこのサバールに、私も行ってみることにしました。その日の夕方、友人はサバールに行くために綺麗な服に着替えていました。
アフリカと言えば音楽やダンス、というイメージを持たれる方も多いと思います。私も、アフリカに来たら音楽やダンスが見たいと思っていたので、市井のひとたちの集まりに混ざって見る機会は、願っていたことだったのでした。

「会場」は、街角です。沙漠の土地である私の任地は、舗装道路以外は砂地なので、このときも砂地の上で、催されました。

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ぐるりと椅子で円をつくり、そこに人が集まってきます。女性たちは皆お洒落をしてきます。そこに、しばらくすると、太鼓奏者の男性たち一行が到着。準備をして、ウォーミングアップとばかりにたたき始めます。皮を張った太鼓の中に、料理で使うボールもありました。セネガルの人の手によって楽器になったボールの底の音は、乾いた音色でよく響いていました。

個人的な話ではありますが、私は音楽が好きなので、この太鼓の響きとリズムが心地良く、聞いているだけで音に合わせて体を動かしたくなってしまうのですが、周りを見渡すと、ぐるりと囲まれた椅子に座った女性たちは、誰もそんな素振りを見せず、周りの人とおしゃべりするくらいで、ただただ、座っているのです。これはちょっと面白いな、と思いました。この後に始まるダンスはとても動きの激しいものなのに、それまでの前奏とも呼べる部分では、全く動かない、というのは、ある種の流儀のようなもののようにも、最初に踊り出てくる「勇者」を、待ち構えているようにも見えました。そして、それが場の緊張感を生み出す効果を生んでいるようにも思えました。

しばらく太鼓だけの演奏が続くと、座って見ている女性の中からおもむろに踊り子が真ん中のスペースに出てきます。そして太鼓奏者と目を合わせ、息を合わせながら、自分のダンスを始めます。ここでようやく周りの観衆も歓声や手拍子で高揚を表現します。太鼓奏者と踊り子が向き合っている様子は、まるで相手を挑発し合っているようにも見えます。ひとりが出てくると、次のひとが入れ替わるように出たり、二人や三人で一緒に踊ったりもします。段々場が温まってくると、次々とひとが踊り出てきます。

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太鼓奏者と目が合ったら最後(?)、私も踊るように促され、見様見まねで、太鼓の人が煽ってくれる振り付けを真似しつつ踊りました。(ダンス部だった高校時代以来・・・?)不思議と、踊っているときは無心になっているような気がしました。女性たちもこんな風に、無心になって踊り、自己表現することで、日常から非日常へとしばしワープし、発散しているだろう、と思いました。

太鼓のリズムもダンスも、身体の底からその衝動が沸き上がってくるものだということを、このサバールを見ていて感じました。そして、曲りなりにもダンス部員だった私は、その激しさがよく分かるのですが、女性たちの腰の動きがとても力強いです。あのような動きは相当柔らかく動かしていないとできないと思います。筋肉がしっかりとついている感じがして、魅惑的です!

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このサバール、毎週日曜に催しているということでした。
音楽や踊りというものは、多くの地域で恐らく伝統的に、人びとが日常の労働や家事などからしばし解放されて、非日常を楽しみ、発散することにつながってきたものなのかな、と思います。

こういった表現の場が、すぐそこにあるということ、それは人びとの心身にとって、実はとても大切なことなのではないか、とそんな風に、私は思えてなりません。

私もまた参加させてもらいたいな、と思っています。

参考文献
Jean-Léopold Diouf (2003) ,‘Dictionnaire wolof-français et français-wolof’ , KARTHALA.