南相馬でフェスを開催!太陽族の花男が語る「ROAD to 南相馬 みんなで花火をあげよう」

アースガーデン“夏”のステージにたつ、北海道出身のロックバンド「太陽族」 ボーカルである花男さんの聞くものの心を震わす、魂の叫びともとれる歌声と、ギター、ベース、ドラムの息の合ったキレのある演奏が特徴だ。また、花男さんが描く詩の世界は、純粋だが男臭く、泣いてるあの子や歯を食いしばって頑張っているアイツにそっと寄り添ってくれるような温もりがある。忘れそうになる大切なものを共感できたような気持ちになるのだ。

ROAD to 南相馬 みんなで花火をあげよう
太陽族 花男

花男さんは大震災で傷ついた人たちに光をあてるような音楽活動を続けながら、秋に福島の南相馬で開催されるロックフェスで花火を打ち上げるプロジェクトを進めている。

まずは、事の始まりである、311のエピソードから伺った。

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花男「ちょうど太陽族のアルバムのツアーがあって、札幌の実家にいたんです。昔、奥尻島で地震があった時とすごく似たような気持ち悪い揺れ方をしたんで、テレビをつけたら津波の映像とかが映ってて。大船渡とか、何度かライブしに行ってたんで、地元の友だちとかの顔が浮かんで。そのあとの札幌のライブは大変でしたね。ライブハウスは自粛していて、ライブをやらないって理由が『電力不足』。

でも北電で働いてる友だちに聞いたら、『北海道は今のところ、電力は関係ないから、お前の仕事の歌なんだから歌えよ』ってすごく怒られて。結局、ライブできることになったんですけど。改めて自分のやることをやれるんであれば、もう日常と同じことを一生懸命やることが第一歩だなって。

6月くらいかな。岩手の友人たちが沿岸部で復興活動をしていたんです。『絶対、今の景色見たほうがいいから』って呼んでくれて。もうガレキだらけのなかを、何とかギリギリ車が通れる道を走りました。自衛隊がたくさんいて、遺体を探している段階で。いやぁ、ショックでしたね。

震災のあと、仮設住宅をまわって、自分の歌をまったく知らない人の前で歌う時に、最初は歌の詩で『生きる』とか『死ぬ』とか入らない、無難な曲を歌っていたんですけど、どうもしっくりこなくて。あるとき、もう何言われてもいいから、『前よりもいい町にしようぜ』って、今を生きるための力強いライブをやろうって決めました。もう被災地じゃなくて、新しく発信する場所だから。地元のみんなが言わないと、駄目じゃないかって。同じ日本人なんだから、他所もんじゃないって気持ちで。」

騎馬武者ロックフェスで打ち上げる募金花火

9月に福島県南相馬市で開催する無料の野外音楽フェス「騎馬武者ロックフェス」。太陽族として出演はもちろん、自分たちのライブで集めた募金で花火を打ち上げるプロジェクトが進行中だ。

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花男「去年の3月に岩手県の大槌町でライブがあった夜、仮設住宅で暮らしている友だちや南相馬の友だちと、みんなで飲んでいたんですよ。当時、岩手や宮城では、野外フェスとかいろいろできてきてたんだけど、福島ではまだあまりなかったんですよ。それで『福島、何やってんだよ』って話になったのが、『騎馬武者ロックフェス』の発端ですね。

それでそこにいた、10年来のバンド仲間でもある、南相馬の友人が実行委員になって、地元の飲食店もいろいろ協力してくれることになりました。ライブをやらしてもらったバーだとか、打ち上げで行った焼き鳥屋さんだとか、地元の飲食店の人たちが集まって、フェスの準備をしているときにすごく感じるんですけど、裸電球くらいの、小さいけど誰かを照らしている、そんな温度が感じられるフェスになったらいいと思っています。

そこじゃないと伝わらないものって絶対にあるので。福島県から出てった人たちに対して、『なんで逃げたんだよ』って言う人も少ないけどいるらしく。でもそうじゃなくて、『帰っておいでよ、お祭りだよ』っていう受け皿を1年に1回、これからつくっていこうって、実行委員の地元の人たちが言っているんです。

花火を上げるための募金活動を始めたきっかけは、音楽が不謹慎だからライブを自粛しろって時期があったじゃないですか。気持ちはわかんないわけでもないんですけど。でも俺は中学で転校したとき、友だちができなくて、その頃は音楽だけが友だちだったんです。そんな音楽好きで音楽に救われてきた人間としては、『何を言ってるんだ、今こそ音楽じゃねぇか』って。その不謹慎と言われた音楽で、悔しいから俺は募金を集めたかったんです。いろんなところで募金を集めたりするのは、ツアーでまわってできることだから、『俺、じゃあ花火のお金、集めてくる』って。まだフェスをやるって決まっていない段階から、『俺、やるから』って(笑)。

やっぱり『未来を照らしたいな』って思ったんで、子どもたちの夢や今生きている人たちの未来を照らしてあげたい。もちろん追悼の意味もあるんですよ。震災で亡くなった方たちも、笑顔が咲いている今の南相馬にちょっとでも安心してもらえるように。前に『福島って将来人が住めなくなるんだよ』って意見を地元の人から聞いたときに、『いや、そんなこと言ってたら駄目だ』って思って。来年が楽しみになる、少しでも未来を照らせる一日にしたいなって思っています。」

南相馬リーベでのライブのあと、お客さんと。
南相馬リーベでのライブのあと、お客さんと。

恩返しをするための旅

ツアーでいろんな場所をまわるのも、一種の旅だろう。花男さんの感じる旅とは?と聞いたら、こんな言葉が返ってきた。

花男「俺は『音楽をやるなら東京だ』って高校卒業して北海道を離れたんです。言葉悪くすると、『捨てた』ってみられてもおかしくない。北海道のために何もしていないなってコンプレックスがずっとあって。でも小樽の港から出たときが実は旅の始まりで、今でもその旅が続いてるっていうイメージがあるんです。そして未だに音楽を続けられてて、いろんな人と出会えて、生きているんで。いつかは北海道に戻って、みんなが集まれるような場所をつくれればと思っているんですよ。恩返しできたらなって。」

夏の「アースガーデン」、秋の「騎馬武者ロックフェス」に向けて

ライブをやるときは、まず、自分が楽しめるようなステージにしたいという花男さん。夏の「アースガーデンと秋の「騎馬武者ロックフェス」に向けた想いを教えてもらった。

花男「南相馬の人たちが『大人たちがこんなにかっこいいことやるんだぞ』って、子どもたちに向けて、頑張っていることを伝えたいですね。南相馬の元気をね。それを背負うというか、抱きしめながら、伝えたいという気持ちがすごくあるんですよ。」

まさに太陽のようなステージがみれるはずだ。今から楽しみで仕方ない。
夏は代々木公園、秋は南相馬へ!!「旅」に出よう!!

【騎馬武者ロックフェス】
9月20日(土)「騎馬武者ロックフェス」
@相馬野馬追祭場地ひばりヶ原地元の演奏家以外に大物ミュージシャンたちが出演予定の無料の野外音楽フェス。地元商店街が中心となって飲食やグッズの出店が並ぶ。約1000年前から続いている伝統行事「相馬野馬追」も演出されるそう。「太陽族」が全国をまわって集めた募金で打ち上げる花火は見ものだ。当初50万の予算で始めた募金は5月の時点で120万を超えた。参加した子どもたちに持ち帰り用の花火もプレゼントする予定。募金は開催直前まで続けられる。