【インタビュー】「フェスと地域のいい関係が、 街を面白くする」石巻から全国へ!鈴木 哲也さん

「石巻からやってきた面白い人がいるよ!」

鈴木哲也さんに会ったのは、仕事の先輩が連れて行ってくれた横浜での飲み会でのこと。いろいろ話していたら、共通の知り合いがわんさかいることが分かりました。しかもみんなフェス関係者。

なぜなら、鈴木さんは、IT企業の社員として石巻で地域活性化に挑みつつ、プライベートで全国のフェスのサポートを行っているからです。そんな鈴木さんに、地方で開催するフェスの意味について聞きました。

そもそも地方フェスは不利だ

「フェスをうまく運営していくのって、すごく難しいですよね。運営の内部を見れば、どのフェスも金銭的にかなり厳しい。でも、やる意味があるからやるんだ!っていう。

ただ、お金をちゃんと回さなきゃと思いすぎちゃって、ケンカしたりとか、当初の思いからは逸れてしまったりとか。今は、フェスがすごく多いですし、何のためにやるのか、自分自身にも問いかけながら運営しています。」

お話聞いた鈴木さん。実はバンドマンでもある。
お話聞いた鈴木さん。実はバンドマンでもある。

鈴木さんは、東北にて隔年で開催される『東北ジャム』、石巻で開催するサーキット型フェス『PARK ROCK ISHINOMAKI』、鈴木さんの地元である茨城で開催する『結いのおと』、そして島根県の隠岐諸島で開催する『音つなぎアコースティックフェスティバル』の4つをメインに、地方で開催する様々なフェス、イベントをお手伝いしている方。

開催にいたるまでの大変さを身をもって知っているからこそ、重い言葉です。

「地方で開催するのは、なおさら大変です。例えば、アーティストさんには交通費に加え宿泊費もお支払いする。それだけでずいぶんとコストがあがります。人口が少なければお客さんとなる対象も少ないし、地域によって人気のあるジャンルに偏りがあったりもします。」

野外フェスからフェスティバルへ 音楽以外の可能性

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「金銭的にはすごくきついですが、PARK ROCK ISHINOMAKIでは、できるだけ石巻に泊まってもらって、石巻の昼も夜も見てもらいたいという思いがあります。アーティストさんに時間があれば、ぼくらが被災地域をガイドすることもありますし、お客さんのために被災地域ツアーも行っています。」

単純に興行として成功させるなら、人口が多い東京や大阪で開催すればいい。でも、地方でのフェスは近年どんどん増えています。そこにはやはり主催者の思いがあります。

「石巻に来てもらう理由を作りたいんです。被災地に行くタイミングがない人にとってのきっかけになるといいなと思っています。被災地に遊びに行くってちょっと抵抗がある人も多いと思うのですが、地元はそんなことはない。

ただ来てよと伝えても、難しいとは思うので、逆に、地元から楽しい場所があるんだよって発信する。アーティストさんも被災地で演奏したいという方が多くいらっしゃるので、いい機会になっているようです。」

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その場所に来てほしい。その場所の空気を吸い、食べ物を食べ、景色を見て、夜を過ごし、朝を迎える。地元の人だからこそ、その場所の魅力もよく知っています。自分の好きなもの、いいと思っているものを、みんなにも知ってほしいという思いは、誰にでもあるのではないでしょうか。

「『結のおと』を開催している結城市は城下町で、江戸から明治にかけての町並みが保存されています。結城紬(ゆうきつむぎ)という着物が有名なので、フェスではアーティストに着物を着て演奏してもらうんです。1着100万円ぐらいするような着物なので、保険をかけますけどね(笑)

そうするとアーティストにとってもお客さんにとっても非日常感があります。地元にあるものとフェスが融合するようなカタチはひとつの理想ですよね。」

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続けるための意思と工夫

このように地域と結びつくフェスの開催を、主催者同士で手助けできるように、東北で開催するフェスの主催者同士の横のつながり「みちのくフェスティバルライン」があります。

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「地方で開催するフェスの主催者の方としゃべる機会がたまにあります。

そうすると『やり続けるしか無いよねぇ』って話になる。長く続ければ、その地域の音楽文化が育っていくことが実感できます。だからこそ続けるために、主催者同士で困っていること共有し、助け合えたらいいなと思って『みちのくフェスティバルライン』は立ち上がりました。

具体的に言えば、ボランティアさんが各地のフェスのボランティアで場慣れして、現場力をパワーアップさせて、また戻ってきてくれるとか。とても助かっています。」

石巻、東京、その他の地域を行き来し、いろんな人と話をして、場作りをしていく。その熱意に驚かされっぱなしなインタビューでした。会社の仕事だって当然忙しいはずですし、自身で音楽活動もされている。(oaqkというバンドでドラムをたたいており、PARK ROCK ISHINOMAKIにも出演しています)

なんでそんなに頑張れるんでしょうか?

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「音楽が好きだからでしょうね。自分が好きな音楽をいいと思ってくれる人がその街で増えていたらうれしい。それに加えて、その土地で頑張っている方をサポートしたいんです。

フェスの主催者の方は、本当にアツい人が多い。こだわりがあって、思いがある。そんなフェスが増えていったら、世の中、面白いじゃないですか、絶対。」

鈴木さんの少年のように純粋な気持ちに突き動かされ、周りの人もアーティストも来場者も一緒に、気持ちのいいグルーヴの渦ができていくのでしょう。その渦を体験したければ、鈴木さんの関わるフェスティバルにぜひ足を運んでみてください。