ギリギリのところであえて開催する。BRAHMAN、 THE BACK HORN、太陽族が出る南相馬のフェス「騎馬武者ロックフェス」

9月20日に福島県南相馬市で開催される騎馬武者ロックフェスは僕たちも何度か紹介し、応援する今もっとも注目のフェスです。南相馬は、東日本大震災で、地震、津波、原発事故による放射能汚染、その後の風評被害と、4重の苦しみを受けてきた地域で、福島原発事故の後も住民が住み続けた「原発に最も近い街」と言われています。

この街でのロックフェスが開催まで2週間のこの時期早々にクラウドファンディングの目標募金を達成しました。

そして、この街でフェスティバルを開催する意味、県外に住む僕たちが福島そして南相馬に生きる人たちと出来ることを考えます!

太陽族 「ヒバリ」 南相馬 騎馬武者ロックフェステーマ曲

最高の環境の【騎馬武者ロックフェス】会場<

 
 7月中旬、南相馬【騎馬武者ロックフェス】の実行委員会に参加させていただく機会があり、その際に、フェスの会場となる雲雀ガ原祭場地(ひばりがはらさいじょうち)にも立ち寄ってきました。
 僕が【騎馬武者ロックフェス】について気になっていたのは、「会場の空間線量はどれくらいか?」ということと、「南相馬に暮らす実行委員の方々のこのフェスにかける想いはどういうものなのだろう?」ということでした。
 
 【騎馬武者ロックフェス】会場である「雲雀ガ原祭場地」は、千年以上も続く、国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」が行われる場所でもあります。よろいを着て旗を背負って疾走する「甲冑競馬」など、かつての騎馬武者の姿を見に来るお客さんは4万人を超えるそう。南相馬市民にとっても特別な場所であることに違いありません。
 実際、会場を目にして、まず青々と茂る草地の広さに驚きました。そしてその周囲に大きく競馬場のような楕円状のコースが取り囲んでいます。楕円状のコースの東側は小高い丘になっていて、斜面上部まで登ると雲雀ガ原祭場地の全体像だけでなく、南相馬の町並みや遠くの山々まで見える、絶好のロケーション。この場所で入場フリーの野外音楽フェスをやるなんて、最高だろうなと思いました。

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会場の放射能の線量は??

 雲雀ガ原祭場地には、空間線量率を測っているモニタリングポストが2つあります。祭場地の東側に一つ、西側に一つ。実はここで計測されている数値は南相馬市内に設置された数多くのモニタリングポストに比べて若干高めです。全国に設置されたモニタリングポストの数値はウェブサイトで公開されているのですが、7月下旬から8月下旬にかけての平均値は1時間あたり0.378マイクロシーベルト。この日訪れた数値も0.38あたりで、それは手持ちのガイガーカウンターで測った値とほぼ同じでした。

 南相馬の市街地でみると、0.1~0.2マイクロシーベルト/時がほとんどです。震災以降、一つの基準となっている「追加被ばく線量年間1ミリシーベルト」。これは自然被ばく線量と医療被ばくを除いたもので、1時間あたりに換算すると0.23マイクロシーベルトになります。もし仮に、雲雀ガ原祭場地に1年間通い続けるとこの基準を超えてしまいますが、一日だけの滞在なら許容できるレベルではないかと、僕自身は思っています(値の受け止め方は、人によってさまざまで良いと思います)。

実行委員会に参加して感じたこと

 会場を見学した後、【騎馬武者ロックフェス】の実行委員会に参加させてもらいました。この日の参加者は20名ほど。フェス開催を聞きつけ、初めて参加する人も幾人かいました。

 ここで僕が感じたのは、「みなさん、野外音楽フェスの制作は本当に初めてで、そんな手探りの状況のなか、音楽を愛する人たちが集い、音楽の持つ力を心底信じて前を向こうとしているんだな」ということ。

 7月中旬のこの時期には、スケジュール的に制作も資金集めも若干、遅れ気味。それでもこの南相馬で、「ロックやパンクを愛する人間がこれだけいるんだぜ!」「苦労も多いけど、前を向いて頑張っているこの街を一度見に来て欲しい!」「避難した人が里帰りの気持ちで返れる僕らのイベントを!」「南相馬の子どもたちに希望を与えられる場を!」という気持ちを愚直に表現したいという、実行委員みなさんの想いがビリビリと伝わってくる場でした。

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「今、福島そして南相馬で生きること」
加藤登紀子さん、SUGIZOさん、医師 鎌田實さんと一緒に考える

 
 先日、8月12日に東京の代官山で、”騎馬武者ロックフェス応援企画”と称したトークイベントが開催されました。

 登壇したのは、チェルノブイリやイラク、福島で放射能汚染のなか、子ども達を守る活動をしてきた鎌田實医師に加えて、南相馬に関わりのあるミュージシャンの加藤登紀子さんやSUGIZOさん、太陽族の花男さん、そして南相馬市で住みながら、さまざまな活動を続ける現地の人たち。この勉強会のテーマは、「今、福島そして南相馬で生きること」。

 事前の参加申し込みで満員となった会場の当日は、登壇者とお客さんの距離も近く、かなりホットな雰囲気でトークが進みました。

ダイアログ勉強会

登壇者らの言葉

 南相馬の保育園で副園長をしている近藤さんからは、「南相馬でも高い線量のところはあるが、子育てをしている大体のところは、0.1マイクロシーベルト台。でもこれまで『ここは大丈夫だ』と言ったことはない。大丈夫な保証がないし、安心と思う気持ちも人さまざま。それぞれの怖さの温度に寄り添うことが必要。だから福島を離れた人に戻りなよと言ったこともない。生きるというのは放射能だけの問題じゃない。」と。

 原発事故後、医師として最も早く現地に入ったという鎌田先生からは「福島で子どもを育てるには3つのことを続けることが必要だ」とチェルノブイリを事例に出して説明しました。食品のベクレル表示を含めた放射能の見える化をすること、検診を充実させること、保養に出すこと。保養に関しては子どもは代謝が速いから、まとまった期間に安全な土地で安全なものを食べて思いっきり遊ぶことでかなり回復できるそう。「そうした上で親と子が一緒に暮らす。よそ者が福島にいることをバツとするんじゃなくて、福島で生きていかなくてはいけない子どもがいるということを受け止める。苦渋の選択をしている人たち。それを受け止めて、その人たちにどういう温かな応援をしてあげれるのかということが大事だ」。
 
 南相馬に行って「(住民たちが)戦っているな」と衝撃を受けたというSUGIZOさんからはこんな話がありました。「自分でチョイスしてそこで生きているという覚悟を南相馬で感じた。現地で聞いたのは『ぜひ来てもらいたい。僕たちがどういう風に暮らしているのか。どういう気持ちでここにいるのか。福島を南相馬を知って欲しい』。やっぱり現地に行くことが大事なのかな。匂い、音、空気。映像じゃ伝わらないこと。現在進行形じゃないですか。あと被災地に行くとパワーをもらえる。助けに行ったつもりが心を救われちゃったりする。震災時、いろんな人が被災地に行ったけど、意外と心に傷がある人が行っている。むしろそこでエネルギーをもらえているんです」。

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【騎馬武者ロックフェス】の実行委員 岩崎さんから

 最後に【騎馬武者ロックフェス】の実行委員である岩崎淳一さんからの言葉。「縁あって千葉から南相馬に移り住み、そこで音楽を通じて出会った人の繋がり。その仲間達とここで何かやろうと腹をくくった。だけど、東京よりも高い線量のところに行くのは気持ち的に壁ができてしまう人たちに対して、どういう配慮をして、どういう安心感を与えてあげられるのかっていうのは、これから一生背負って戦うんだぞ、というテーマをいただいたと思っている。それを発信したことで風評被害になるかもしれない。でもその土地で戦うことを決めた以上、戦いきらなくてはいけないと思っています」。
 
 登壇者によるトークが中心のイベントでしたが、途中で鎌田先生の詩の朗読と登紀子さんの歌、終盤には太陽族の花男さんによる熱い弾き語り二曲が歌われました。また、参加したお客さんからも「福島への想い」が語られ、会場は何か大きな一つのことに向かって動き出している雰囲気がありました。
 
↓当日の様子はUSTREAMで見ることができます。

1%でいいから誰かのために

 トークイベントで鎌田先生が話してくれたことが胸に残っています。「1%でいいから誰かのために生きなさい」という教え。それをイラクでガンに苦しむ少女から教えてもらったと。鎌田先生らが支援してイラクの病院内で勉強を教える院内学級の先生を派遣し、学ぶことの素晴らしさを知ったその少女。その少女が書いた絵を鎌田さんらが日本のチョコメーカーとコラボして、バレンタインデー用のチョコ缶の蓋にプリントして販売し、その利益が鎌田さんらの活動資金になっているそうです。その少女は亡くなる時に「日本の優しい人が買ってくれたチョコで、イラクに病気を治す薬がやってくる。私は死ぬけど、他の子どもが助かる時代が来るから。私は幸せです」と書いた手紙をくれたという。

 その話をした後、鎌田さんは「こんな時代だからこそ、生きることで大変だけど、1%誰かのために生きることでまわりまわって自分のところに返ってくる。だから今こそ、福島のことをみんな忘れないように。もう3年半経ったから大丈夫、ということじゃなく、忘れないようにすること。今、その1%を待っている人たちがいることを忘れないで欲しい」と締めくくりました。

ギリギリのところであえて開催する、
地元の強い気持ちに触れてみませんか?

 【騎馬武者ロックフェス】の会場をみて、実行委員の人たちとも繋がり、そして東京で開かれたトークイベントを通じて、僕はあらためて、「当日、足を運びたい。何か、一緒にやりたい」と思いました。また、僕以上に放射能に対して注意を払っている人たちに対して伝えたいのは、「もし応援してくれるのなら、やり方はいろいろあります!」ということ。【騎馬武者ロックフェス】では資金集めのためのクラウドファンディングも行っています(詳細は下記)。

 まずは「福島を忘れない」こと。そしてもっともっと今の福島を知りたい人は、【騎馬武者ロックフェス】に一緒に行こうということ。一日だけのフリーフェス。放射能について言えば、ギリギリのところであえて開催する、地元の強い気持ちに触れてみませんか?と伝えたい。そこで逆に受け取るのは、感動だけでない、これからの人生を支えてくれる熱い何かなのだろうかと、今からわくわくしています。
  

開催概要

「南相馬・騎馬武者ロックフェス~ふるさとのちから~」
日時:2014年9月20日 10:00~21:00(予定)
場所:福島県南相馬市 雲雀ヶ原祭場地(相馬野馬追祭場地)  
入場:無料 (車の方は車両入場料¥2000が必要)
出演者:太陽族 / 細美武士(the HIATUS) / BRAHMAN / THE BACK HORN / ROTTENGRAFFTY / かりゆし58 / 竹原ピストル / RYOJI&SKAPUNKZOMBIES / TRIPLANE / マダムギター長見順 / イシワタケイタ / ひとりぼっち秀吉BAND / 梶原徹也(ex.THE BLUE HEARTS)太陽ドラム / TEX&SUNFLOWER SEED / 中村マサトシ(THE YOUTH) / Guarana / Radioactivity / BLACK BASS / Link Skill
打ち上げ花火:「みんなの花火」
(太陽族が中心となり、全国の皆さんからご協力いただいた募金により打ち上げ花火を予定。)
http://www.kibamusha.com

騎馬武者ロックフェス2014