【小林武史インタビュー】普通の人が活躍できるap bankの災害ボランティア拠点づくり

この夏、暑さのスタートとなった海の日の週末7月14日〜16日の3日間にわたって、ap bank fes ’18が開催されました。会場は、ap bank fesの始まりの場所、静岡県掛川市「つま恋リゾート 彩の郷」。

当地では6年ぶりの開催ということもあって、おおいに盛り上がりましたが、実はその終了と同時に、小林武史さんは東京に戻らず7月の豪雨で被災した岡山県に飛んでいます。

7月末から8月初旬にかけてのわずかの期間で、現地での活動を準備し、ボランティアベースをスタート。今もその活動が広がっていることをご存知でしょうか?

私たちアースガーデンも、これまでのap bank fesオーガニックフード・エリアを中心とした制作から、東日本大震災の後の宮城県石巻での「Reborn-Art Festival」などのap bankの社会的な活動に伴走してきました。同様に、今回の岡山での活動もご一緒している中で、少しでもその活動に皆さんのチカラを集めたいと考え、ap bank代表の小林武史さんにインタビューを行いました。

フェスの間も心によぎった、ある思い

「そもそも、ap bank fesって、(つま恋では)6年ぶりでしたけど、、ap bankは、もう15年もやっているんです。その間には東日本大震災をはじめとして、頻繁に起こる自然災害だったり、気候変動だったり、いろいろなことがあったけど、そこ(ap bank fes)でやっていることは、いわば人の繋がりや循環を生み出す“装置”みたいな役割なんじゃじゃないかと思っているんですよ。

でも今、世の中を見渡してみると、そうした人の循環に対する感覚が、ちょっと鈍ってきているんじゃないかとも感じているんです。今年のap bank fes ’18は、もちろん6年ぶりの復活という喜びもあったし、しっかりやっていく気持ちがすごく大きかった。そんな最中だったんですね、あの西日本の豪雨被害が起こったのが……」

とにかく現地に行ってみるべきだって思ったんです

フェスの期間中、充実感の一方で、小林さんの心の中には、西日本の被災状況のことが、常によぎり続けていたと言います。

「僕だけじゃなくて、出演者はもちろん、フェスに参加した多くの人が、実はそうだったんじゃないかと感じています。歌を届ける音楽って、苦しさや辛さに対する向き合い方や、それをどうやって乗り越えていくのかみたいなことがテーマのひとつとしてあると思うんです。

それが心の中に蓄積されていくというか。だからこそap bank fes ’18が終わった瞬間、やり遂げたって思いと同時に、とにかく現地に行ってみるべきだって思ったんですよ」

“達人”じゃなくても参加できる、“拠点”を作るのが急務だった

ap bank fes ’18が終わったのが7月16日。小林さんはそこで東京には戻らず、18日に現地入り、そこから2日間に渡って実際にボランティアたちと活動を共にしています。

「一緒に現地に入ったピースボートの方々とも何をするべきか話し合いました。まずやるべきは『ボランティアのベース(拠点)』を作ることだろう、と。

マスコミでは、復旧ボランティアに対して、ある種の自己完結が呼びかけられていたんです。つまり、慣れない人がただ行っても、かえって迷惑になる可能性があるから、諸々自己管理ができる人が行きましょう、みたいなね。

でも、東日本(大震災)の時も、熊本(地震)の時も、 “達人”レベルとまでは言えない人たちが、たまたま集まって活動しているうちにベースみたいなものができていきました。それは、いくつかのフェスにも繋がっていきます。

……ほんとに大変な思いはしたけれど、そこには“新しい豊かさ”みたいなものも確かに生まれたと思うんですよね。僕は、それを多くの人に勧めたい、体験してもらいたいんです。だから、参加にあたってのハードルを上げることより、ごく普通の人たちが参加できるような、ハードルを下げるための拠点を作ることが急務なんじゃないかって」

災害ボランティアは、“楽しい、ポジティブなこと”でもある

今回の西日本の豪雨災害に対するアクションについて小林さんと最初にお話した際に印象に残っている言葉があります。

「ひとごとじゃないって感覚を大事にしたい。実際に動ける場を作ったほうがいい」……小林さんは、まさにそれを実行したわけです。

「現地では、けっこうな人数のボランティア初体験っていう人たちが参加しています。被災地の混沌とした状況を、少しずつ整理して何か新しい状況ヘと運んでいく。

言葉を選ぶのが難しいんですが……ある意味、災害ボランティアとは、“楽しい、ポジティブなこと”でもあるんです。いち早くボランティア参加していたミュージシャンのSUGIZOくんなんかも、感じていたんじゃないかな。ある種の充実感がないと、ボランティアは存在し得ないとも思う。

きっと、これを読んでいる人が想像しているよりもずっと、ごく普通のひとが、これまでやったことのない大変な思いをなんとか乗り越えて、ボランティアとして活動してそんな充実感を感じている……それを実際に見てきたし、体感できました」。

いいことをしましょう!と言いたいんじゃない。人が生きていく実感を得られるのがボランティア

東日本大震災をきっかけに盛り上がった、経済成長重視の近視眼的な考え方ではダメなんだっていう人たちの思いも、時が経つにつれて風化し始めているように言われることもあるけれど、小林さんの考えはちょっと違うようです。

「今年の高校野球での金足農業高校を応援する気持ち? あの全国的な盛り上がりを見ていて感じるんですけど、日本中で『地方頑張れ!』って思いが強まっている気がするんです。『経済成長が一番? そんなことないんじゃない?』ていう考え方も、それなりに浸透してきていると感じるんですよね」。

日本におけるボランティア文化も、確かに根付き始めている、という事でしょうか?

「僕が言いたいのは、『いいことしましょう!』っていうことではないんです。この世界は、いろんなことが重なり合って、僕らに生きていることを感じさせてくれているわけです。いいことばっかり見ていたいって言っても無理な話だし、逆にそれじゃあ面白くないだろう、とも思うんです」

岡山県の総社市にボランティアベースを開設、
アースガーデンも一緒に活動を広げています

地元の人に寄り添いながら、一緒に大変な思いをしながら乗り越えた、その先にある充実感と、生まれる繋がりの尊さ……何より自ら足を運んで感じた事だからこそ、小林さんの言葉はとてもリアルであり、そして自然でもありました。

ap bankでは、今回の西日本豪雨災害で大きな被害を受けた、岡山県の総社市にボランティアベースを開設、総社市や倉敷市真備町を中心にボランティア活動を行っています。活動に参加された方の多くが、「ニュースでの情報ではなく、現地に行き自分の目で見るからこそ感じることがありました」いう感想を残しています。

現在もボランティアに参加していただける方を募集しています!! 一人でも安心して参加できます。今回の記事を読んで、少しでも興味を持った人は、ぜひアクションを起こしてみてください。