No Nukes! サステイナブルな未来のため、プサンでエネルギー問題について共に考えた

世界事務局をジュネーブにおく国際NGO、YWCA (Young Women’s Christian Association) より、日韓のユースたちが参加した「日韓ユース・カンファレンス」のレポートが届きました。

東日本を襲った大震災そして原発事故。5年前のあの日から、私たちの生活の中でエネルギー問題を深く考えるようになった。何を食べると安全なの?東北以外にも放射線濃度の高いホットスポットがあると聞くけど、私の住む地域は大丈夫なの?ガンの発症率が高くなるの?被曝の影響を考えれば考えるほど、私たちの中で、ある1つの変化が生じた。多くの人がイチから学習を始め、そして、原発に依存する社会の仕組みを変えないことには、根本的な問題解決にならないことに気がついた、ということ。

プログラム中に展開した反原発キャンペーンには多くのメディアが集まり、複数の韓国メディアで取り上げられた。
プログラム中に展開した反原発キャンペーンには多くのメディアが集まり、複数の韓国メディアで取り上げられた。

2016年8月1日から4日までの4日間、日韓のユースたちが、韓国・プサンにて「核のない世界へのエネルギー転換」をテーマにしたプログラム、「日韓ユース・カンファレンス」に参加した。プサンには現在8基の原発が立ち並び、それに加えて、新たに2基の建設に向けた動きがある。そんな世界有数の原発密集地域であるプサンでは、3.11後、市民が立ち上がり、古里(ゴリ)原発1号機の廃炉が決定した。プログラムの参加者たちは原発周辺地域へのフィールドワークに加え、エネルギーの大量生産・大量消費とは異なる、オルタナティブな生き方を模索する「ミンドレ・コミュニティ」を訪問し、持続可能な循環型農業や自足的エネルギー生産の取り組みを学んだ。

エネルギー自給に取り組むエコ・ビレッジ、「ミンドレ・コミュニティ」
エネルギー自給に取り組むエコ・ビレッジ、「ミンドレ・コミュニティ」
エネルギー自給に取り組むエコ・ビレッジ、「ミンドレ・コミュニティ」
エネルギー自給に取り組むエコ・ビレッジ、「ミンドレ・コミュニティ」

プログラムに参加したユース参加者の声を紹介したい。

古里原発はプサン市中心部から北東へ高速道路を経由して1時間足らずのところにあります。距離にして50kmもありません。人口340万人の釜山広域市を単純比較することはできませんが、人口360万人の横浜市から約50km、小田原市周辺に原発が林立していると考えることもできるでしょう。訪れた月内村は古里原発が目と鼻の先、目視で丸い原子炉建屋が確認できる海沿いの小さな漁村でした。

お話を伺った方は月内村で代々漁師を営んでおられ、1993年から現在まで、月内村の住民活動の主要メンバーとして活動されており、年齢を感じさせない力強い語り口で私たちにお話しくださいました。

「いろいろ失ってきた。これからも失うだろう。」これは彼のお話の中で最も私が印象に残っている言葉です。一見すると静かな田舎も漁村も近くに原発という存在があることによって、発展が制限され、さらにはグリーンベルト政策によって原発周辺が住民以外は人の寄りつかない地域となり、人が寄りつかなくなったことを良いことに軍施設が多く置かれるようになり、そして死の地域になるという構図を表しています。

原発周辺で生きる方々が失ってきたものは計り知れないものがあります。月内村周辺は良い漁場、そして良いビーチとして発展するための可能性を秘めていたことは間違いないでしょう。プサンからだけでなく、現代グループの企業城下町として知られる人口約110万人の蔚山広域市からも約30km足らずとアクセスに優れています。

私自身、ソウル・釜山・大邱といった3大都市には旅行で何度も訪れたことがありますが、郊外のこのような漁村を訪れたことは初めての経験でした。のんびりとしたこの静かな漁村の雰囲気に、非常に居心地の良さを感じたというのが本心です。しかし、ここにもし原発という存在が無ければどんなに良かったのだろう、と何度も考えました。

プログラム初日の基調講演で、「日韓両国が原発保有のリスクを負う運命共同体である」と言われた時、ハッとさせられました。福島第一原発事故を起こしてもなお、原発再稼働を推し進める日本と、10基もの原発を一ヵ所に集中的に建設しようとしている韓国。両国が現実のリスクを理解し、未来に何を残したいのか、考える機会が本当に必要だと思っていたので、韓国のユースと共に建設的・率直な意見交換ができて嬉しかったです。

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日本YWCAは、これからも未来を生きるユースが、10年後、20年後に送りたい自身の生活とエネルギーのあり方を考えるきっかけを提供していきたい。

YWCA (Young Women’s Christian Association)とは

YWCA (Young Women’s Christian Association) は、世界事務局をジュネーブにおく国際NGOで、国連の諮問機関です。1855年に英国で始まり、現在世界120あまりの国で、約2500万人の女性たちが活動しています。日本においては1905年の設立以来、100年以上にわたって、女性の社会参画を進め、人権や健康や環境が守られる平和な世界を実現するために、さまざまな社会貢献活動を展開しています。

日本YWCA主催の本プログラム、「日韓ユース・カンファレンス」は、日本と韓国のYWCAユース(30歳以下)メンバーが寝食を共にしながら、日韓共通の課題に取り組む草の根の対話・交流プログラムです。1993年に初めて開催されて以来、韓国・日本を毎年交互に会場として、平和を創造するユースのリーダーシップ育成に貢献してきました。「日韓ユース・カンファレンス2016」の報告は以下からご参照いただけます。
http://www.ywca.or.jp/news/2016/0930news.html