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素材とサイジングを大切に。「B-SAN」の細谷あつしさんが語る100年続くビーサン作り

「ビーチサンダルって痛いから履きたくないって人が多い。でも、俺はそう言われるのがすごく嫌なんだよね。鼻緒に天然ゴム、ソールに柔らかいウレタンマット、そして、実際に足を見て履いてもらって良いサイズを選んであげる。そうすれば痛くない。みんなに気持よく使ってほしいなと思って、けっこうマジメに仕事してるんだよ(笑)」

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ビーチサンダルの選び方は、素材とサイジングが大事なのだと教えてくれた細谷あつしさん。数年前までは「YOKOHAMA IRIE MARKET」という名前で、日本全国のフェスに出店していた雑貨屋でした。今は “ビーサン” に特化したお店を出し、NEXT STAGEに挑んでいます。しかも、鼻緒とソールのサイズと色を選び、その場で組み合わせて販売するスタイルです。

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「足ってコンプレックスの原因になるでしょ?外反母趾とか、女の子で足が大きい子、男の人で足が小さい人、靴選びに苦労している人って多いんだよね。特にビーサンは素足が出るから、しっかりお客さんの足を見て、そのコンプレックスを解消してあげれたときのお客さんの笑顔がたまらない。たかが一足1000円だけど、そこには1000円以上の価値があると思ってる。そういう人は、何年も何年も靴選びで困っているはずだから。」 

話を聞いて驚いたのは、ビーチサンダルは日本発祥のプロダクトだということ。1950年代に、日本のゴム会社が、アメリカ人と一緒に開発したプロダクトで、当時は『ゴム草履』という愛称で天然ゴムの鼻緒とウレタンのソールでは製造されていたそうです。それが70年代になって、プラスチックや合成ゴムによる大量生産型になり、今の疲れやすく痛いビーサンのイメージができあがったとか。細谷さんはその頃の『ゴム草履』の履き心地を復活させたいと言います。

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「量販店に行くとさ、ビーサンが壁一面に並んでいてね、スタッフさんは、まさか俺がビーサン屋だなんて思ってないから、普通に接客してくるでしょ。それでお決まりの『よかったらサイズ出すんで』って。いや、そうじゃないだろって。まずお前が俺の足を見なきゃいけないだろうって。フットギアって特殊なんだよね。洋服だったら、ワンサイズ大きく着るとか小さく着るとかありなんだけど、クツはそれが怪我につながったり、ストレスになったりして。簡素化された接客はだめはずなんだよね。知識を持ってないと。この人は足細いなとか、この人は、甲が高いなとか見ながら、鼻緒のサイズを調節して、ソールのサイズを選んであげて。

だってさ、ビーチサンダルって、みんな一度は履いたことあるはずだけど『毎年買うけど痛いんですよね』とか『疲れるよね』って言われて、評価が全然良くない。それを変えたいんだよね。素材とサイジングをきちんと選ぶ。だから、こうやって販売してるんだ。どうすれば痛くないか、疲れないか、を伝えながら、販売していきたいのであって、色が選べることはどうでもよい。もちろん楽しみのひとつだと思うんだけど、それよりも、素材とサイジングで一人一人にあった物を作れるかのほうが大事。

この売り方は新しいって言われるけど、そんなことはなくて、昔の下駄屋さんはやっていたんだよ。お客さんが土台と鼻緒の柄を選んで、親父さんがお客さんの足を見て釘でバンバン打ってサイズを合わせて。」

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素材とサイジングを大切に、一人一人にあったビーサンを提供する。しかも、ここまでやって1000円です。ちょっとびっくりするような低価格ですが、そこも細谷さんのこだわりがあります。

「2004年にYOKOHAMA IRIE MARKETを立ち上げて、年に2回タイに行って仕入れをする。このときに現地で最初にやるのが商店で新しいビーサンを買うことだったのね。それまで履いてたビーサンから、新しいビーサンに変えて、そのビーサンで2、3週間、長い時には1ヶ月過ごす。それってなんだったんだろうって思い返してみると、買いやすさだったんだろうと思う。日本円で言えば、200〜300円くらいなんだよ、ビーサンって。だから、そもそもビーサンって、2000円とか3000円で売るもんじゃないって思ってる。1000円っていう気軽さが大事なんだよ。たぶんね、2000円でも売れるクオリティだと思う。でも、例えば家族5人で来て、5人買ったら1万円。それは怯むでしょう。でも、5000円なら、まぁいっかって思ってもらえるんじゃないかな。みんなで買って、夏の間に家族お揃いで履いて、ボロボロに履きつぶして、また買いに来てくれたらいい。」

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細谷さん自身も、3児の父。まさしく5人家族なわけで、こういった感覚はお父さんならではだと思います。

「この商売を100年続けたいと思ってるんだよね。お客さんから愛されて、家族に愛されて、この家業を子どもに譲りたい。初代の自分の役割は責任重大だし、その方向性がブレないように決めていかなきゃいけない。このカタチが100年後に残っていてほしい。だから、毎日ビールが飲めるように頑張るよ。発泡酒じゃなくてね(笑)」

100年続くビーサン屋。そして、父が考える商売の道。細谷さんはそんなNEXT STAGEをビーサンで歩みます。夏も秋も冬も春も。

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