ベルギー地下鉄テロで命を落とした映画監督が描いた”土地と寄り添いながら生きる人たちの力強さ”『残されし大地』

2016年3月22日、ベルギー地下鉄テロで命を落とした映画監督ジル・ローランによる、福島の帰宅困難区域を故郷に持つ人たちの思いに迫ったドキュメンタリー。3月11日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー/フォーラム福島、シネマテークたかさきほか全国順次公開です。

2016年3月22日、ブリュッセルのテロにて 他31名の犠牲者と共に命を落とした映画監督ジル・ローラン。
遺されたのは、彼がベルギーを離れてフクシマで出会った、故郷を思い、その土地とともに生きる家族の物語だった。

ジル・ローラン監督が見つめた“人と土地のつながり”――

2011年3月11日福島原子力発電所の事故のあと、福島第一原発から約12キロに位置する富岡町は帰還困難区域として指定された。そこにひとり留まり、猫、犬、牛、かつて第一原発で飼育されていたダチョウ等の動物保護活動を続ける松村直登の存在からこの映画は始まった。

s1050残されし大地_メイン

s1050残されし大地_サブ07

s1050残されし大地_サブ02

監督のジル・ローランは、ベルギーを拠点に主に欧州で活躍するサウンドエンジニアだった。妻の母国である日本に2013年に家族と共に来日。元々環境問題にも興味があった事から、“福島”について調べる中で、海外メディアで紹介されていた富岡町の松村直登さんの存在を知り、自らメガホンを取る事を決意。そして選んだ題材が“土地と寄り添いながら生きる人たちの力強さ“だった。3組の家族に寄り添う事で、日常としての福島、そして故郷を愛する思いを紡ぎ出す。

s1050残されし大地_サブ06

s1050残されし大地_サブ05

“反原発”を声高に語るわけではなく、土地本来の持つ変わらぬ自然の美しさを切り取り、感じ取ってもらうことに、ジル・ローランの監督としてのメッセージが込められている。

本作は2015年8月から10月にかけて、福島県において2回に渡り撮影された。パリ同時テロ後の12月、編集作業のためにジル監督は祖国ベルギー・ブリュッセルに一時帰国。編集作業が一通り終わり、内覧試写をする予定だった2016年3月22日、ベルギー地下鉄テロで命を落とすという思いがけない事件が起こる。

レビュー

s1050残されし大地_サブ01

今井 美樹(歌手・女優)

ジル・ローラン監督が命をもって私達に遺してくれた大きな問いかけに、すぐには答えが出ない。私はどこでどう生きていきたいのか。
でもそれは問われるべきことだったのだと思う、私達はどう生き抜いて行くのか…と。

ピーター・バラカン(ブロードキャスター)

第一原発の南隣の富岡町は今や誰も住みたくないところのはずです。でも、その美しい自然の中でずっと暮してきて、いまだに離れられない人たちがいます。生活の変化といえば線量計が必需品となったことでしょう。その淡々とした姿を見ながら、あのような悪夢を繰り返してはならない思いを新たにしました。

覚 和歌子(詩人・シンガーソングライター)

原発事故が起こった福島の今という現実、それを追った監督がテロでいのちを落としたという事実。
この二つを結びつける「人間にとって本当に大切なものは何か」という切実な問いかけが、
真っ直ぐわたしたちに向けられている。

高島 礼子(女優)

映像の美しさ、そしてサウンドの豊かさ。カメラの存在を感じさせない自然な会話の中に、自分もテーブルを囲み会話を楽しんでいるかのような感覚を味わいました。ドキュメンタリー映画にあまり親しみのない人にも観てほしい、感動作です。

清水 圭(タレント)

大地の息吹を感じさせる美しい映像。
しかしなんともいえない哀しさが、映像から伝わってくる。

黒田 知永子(モデル)

静かに時がすぎていく、富岡町。静かで強い怒り。何も何も終わってない。

生方 ななえ(モデル)

うつしだされる鳥の声や風の音は、昔とちっとも変らない。時は経ち、たとえ家族や生活の一部を奪われ、失ったとしても。逝く人の思いは、遺された人たちの胸に何度でもよみがえる。

井上 淳一(脚本家・映画監督/『大地を受け継ぐ』監督)

原発事故で失われてしまった、福島の「普通」。普通の風景、普通の日常、普通の人々。それらがいかに美しく、尊かったか。福島から9500キロ彼方に生まれ育ち、命を奪われた一人の映画人によって、我々はそのことを再認識させられる。失ってから気づくのでは遅い。いま何が出来るのか。

残されし大地

s1050残されし大地_メインビジュアル

監督:ジル・ローラン
プロデューサー:シリル・ビバス
出演:松村直登ほか
原題:『LA TERRE ABANDONNEE』
制作:CVB Brussels
配給プロデューサー:奥山和由 (チームオクヤマ)
配給協力:太秦
提供:祇園会館
協賛:パルシステム/ヴィタメールジャポン/株式会社L&Sコーポレーション
後援:ベルギー王国大使館/ベルギー観光局ワロン・ブリュッセル
(c)CVB / WIP /TAKE FIVE – 2016 – Tous droits reserves
2016|ベルギー|カラー|DCP|5.1ch|76分