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デジタルの中で消えてしまったアナログを探す。モバイルハウスで移動しながら暮らす【SAMPO 村上大陸 インタビュー】

どこで生きる?という問いに、一番自由に答えてくれるのがこの記事。どこで生きるか決める必要がないんです。だって、家が移動するんだもの。20代前半の若者3人のチーム「SAMPO」が考える家はモバイルハウスと呼ばれます。軽トラに載せて全国を自由に移動できる新しい発想の家です。今回はSAMPOのメンバーの一人で、実際にモバイルハウスで暮らしている村上大陸(りく)さんに話を聞きました。

facebookより
facebookより

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「どこで生きる?」
アースガーデンフリーペーパー vol.38
http://www.earth-garden.jp/feature/fp38

自分の部屋だけ所有して、他はみんなとシェアする

「僕、一人っ子なんですけど、一人っ子ってやることないんです。だから、小さいころから、一人で考えこんだり、ものをつくったりしていました。モバイルハウスに関しても、小さいころから想像していたんです。そのときに考えていたのが、ただ家が移動するだけじゃなくて、モバイルハウスが集まる集合場所のようなものを作って、単独でも動けるし、帰る場所もあるっていうシステムでした。」

SAMPOが考えるモバイルハウスのプロジェクトでは、この基地のことを「ハウスコア」と名付けています。ハウスコアには都会にあったり、田舎にあったり、好きなものが共通するコミュニティがあったり、複数のハウスコアがあって、そこにドッキングすることで課金される仕組みを想定しています。まだモバイルハウスが2台あるのみですが、これから無限に広がるコンセプトが計画されているのです。

「自分の部屋になんでも用意するから家賃が高くなるんです。お風呂もキッチンも、24時間常に必要な場所ではないですよね。だから、自分の部屋だけ自分で所有して、他はハウスコアに用意する。必要なときはドッキングすればいいんです。」

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村上さんが生まれ育ったのは、福岡の山の中。近所には、大工さんがたくさんいて、小さいころから大工仕事を教えてもらっていたそうです。大学で東京に出てきた村上さんは、家賃の高い一般的な賃貸住宅に住むのではなく、軽トラを買って、廃材を使い自分で自分の住む家を作ったというわけです。

「今の社会っていろいろ問題があるけど、その根っこにあるのは、街を構成するひとつひとつの“家”だと思うんです。これからテクノロジーが進んでいけば、単純作業は人工知能に置き換えられていきます。そうすると、時間が余っていきますよね。じゃあ、何を持って豊かとするかといえば、時間と場所と人を軸に生きていくっていうことだと思うんです。そんなライフスタイルをおくっていくために、このモバイルハウスが必要なんじゃないかって。」

人生の豊かさとテクノロジーの進歩は比例しない

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さて、冒頭で20代前半とお伝えしましたが、村上さんは20歳。いやぁ、若い。

「僕のお母さんは本が大好きで昔からたくさんの本が家にあったんですが、中学生のときにKindleが発売されました。そんなに本を読むならKindleにしたら?って母に聞いてみたら、本の重さや、旅に3冊だけもっていくために選ぶ瞬間、そういったところに本の価値があるはずだって言っていて、僕もそう思うんです。ただ情報をインプットするだけじゃない。

Kindleって優秀なエンジニアが開発しているはずで、きっと人生を豊かにするために作ったものですよね。でも、本の例から見えるのは、人生の豊かさとテクノロジーの進歩って比例しないってことなんじゃないかと思うんです。」

モバイルハウス事業の前に、VR(バーチャルリアリティ)事業をしていた村上さん。川を見ながら、この川をVRで再現することに限界を感じたと言います。

「例えば、モバイルハウスで旅すると、八百屋のおばあちゃんから、どぶろくのおいしいお店を紹介してもらって、偶然そっちに向かっていったりする。コンピューターは、計算と結果の関係性で成り立っているんだけど、現実は偶然によって振り分けられていきます。

川をVRで再現するとしても、ただ水の流れを表現すればいいのではないんです。湿気や温度、風が吹いて木が揺れる様子など、たくさんの要素があって、これはちょっと無理だなって思って。VRで投資いただいていた人に『バーチャルリアリティーを極めようと思ったんですが、現実には勝てません。だからモバイルハウスやります』って伝えたら、めちゃくちゃ怒られてちゃって(笑)『全額返せ』って言われて、結局、200万円くらいの借金を負ったんですよね。」

サラッと言いますが、20歳の言葉です。しかも、昨年の10月のこと。今ではモバイルハウスへの投資家を見つけ、借金も返済済み。様々な人生があるものです。

テクノロジーを極める、一歩手前に落とし所をつくる

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彼らはこのモバイルハウスの暮らしで、どんなことを大切にしているんでしょうか?

「例えば、レコード屋さんで曲をディグる(探す)感じとか、デジカメじゃなくて使い捨てカメラの質感が新鮮だったりとか、そういうことかなって。

モバイルハウスって話をすると『移動時間の無駄を減らして、もっと有意義に使えるね』って言われたり、VRをやっていたころは『これで旅に出なくてもいいね』って言われたりしたけど、そんなの全然楽しい未来じゃないんですよ。そんなことしたってまた仕事に追われるだけです。」

テクノロジーは、ハサミとか定規と一緒で道具です、という彼の言葉に、思わず何度も頷いてしまいました。

「僕ら世代は生まれたときにはすでにインターネットがあって、VRすげーとか、AIが来るぞーとか、そんなに興奮できないんです。渋谷のヒカリエよりも、野毛とか赤羽にあるローカルでアナログな出会いのほうが楽しい。デジタルの中で消えてしまった時間や質感に魅力があると思います。」

車の中を見渡すと、本、ギター、スケボー、MacBook、スピーカー、布団、クッション、アートなど、小さな空間の中に、様々なものが詰まっています。

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「普通の家だったらものってどんどん増えちゃいますよね。でも、この家はホントに小さいから好きなものしか入れられない。しかも、下手にしまうと動いているときに落ちちゃうので、自分の手で触れて、奥まで押し込んで大切に収納しないといけない。ミニマリストなんですか?と、よく聞かれますけど、全然そんなことないんですよ。欲しいものはいっぱいあるけど、収納できる限界は分かっているので、本当に大切なものや質がいいものを選ぶようになりました。」

制限を設けることで生まれる良さは、アナログの魅力に通じるものがあるかもしれません。

「例えば、ぼくが考えた電子書籍っていうのがあって。それは真っ白い本なんです。表紙も中身も真っ白。台の上に置くと本がインストールできて、どんな本にもなるんですけど、本として持ち歩かないといけない。

エンジニアとしてはOSを入れて、タッチパネルを使えるようにして、薄くして、軽くしてテクノロジーを極めて、合理性の頂点を目指していきたい気持ちも分かります。でもそれじゃ面白くない。我慢して、合理性の一歩手間に落とし所を見つけるようなものづくりをしていきたいんです。」

ぼくは今年で31歳。なんとなく気持ちはまだまだ若い気がしていたのですが(笑)、彼の言葉や感覚を聞いて、新しい時代はこっちなんだなぁと、いろいろ学ばせてもらったような取材でした。テクノロジーの進歩によって、3年後にはきっと今では想像もつかないような世界になっていると思います。でもそれは、冷たくて無機質でプラスチックのような未来ではなく、もっと人の温度を感じるような未来なのだと思うのです。

どこで生きる?という問いに、どこでだって生きれることを証明する彼らは、earthgarden“秋”に出店予定。ぜひ自分の目で見て、話してみてください。

編集サポート:加茂光

アースガーデン“秋”に出店決定!

2017年10月28日(土)、 29日(日)に、代々木公園で開催のアースガーデン“秋”にご出店が決定しています。ぜひ代々木公園に遊びに来てください。

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「どこで生きる?」
アースガーデンフリーペーパー vol.38
http://www.earth-garden.jp/feature/fp38