大きなバオバブの木

【コラム|セネガルの生活】私とセネガルをつなぐバオバブの木

こんにちは。青年海外協力隊隊員として、西アフリカ・セネガル共和国で活動させて頂いていた山口織枝と申します。先日、2年間の任期を終えて日本に帰国致しました。既にセネガルが恋しい気持ちになっておりますが(笑)、今までセネガルでの生活について書かせて頂いてきたこの連載の締めくくりのご挨拶として、セネガルに沢山生えている、あの『星の王子さま』にも登場するバオバブの木について、そして日本に帰国した今感じる様々なことを書かせて頂こうと思います。

『星の王子さま』でで、おぞましいイメージとして描かれているが…

大きなバオバブの木
大きなバオバブの木

以下は、『星の王子さま』の中の、バオバブについて書かれた一節です。

「さて、王子さまの星には、おそろしい種がありました……。バオバブの種がありました。そして、星の地面は、その種の毒気にあてられていました。バオバブというものは、早く追いはらわないと、もう、どうしても、根だやしするわけにゆかなくなるものです。星の上いちめんに、はびこります。その根で、星を突き通します。星が小さすぎて、バオバブがあまりたくさんありすぎると、そのために、星が破裂してしまいます。」(位置No.345)

『星の王子さま』の中では、バオバブの木は、放っておくと星を「破裂」させてしまう力も持つような、どちらかと言うとおぞましいイメージの木として描かれていますが(でも、『星の王子さま』に登場するバオバブのイラストは、とてもチャーミングに見えました)、それはバオバブの木がとても大きく、幹がでっぷりと太く、根がしっかりと大地に張っていて、腕のように枝が空へとほうぼう伸びている立派な様相から、想像されたことなのではないか、と思いました。

セネガルではその実や、皮までも、様々な用途に使われているという話しを聞きました。

幅広く活用され、みんなの役に立つバオバブ

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セネガルで多くの人たちが話しているウォロフ語で、バオバブの木はguy(グイ)と言い、バオバブの実のことはbuy(ブイ)と言います。バオバブの実であるブイは市場でも売られていて、穀物に混ぜて食されたり、加工してジュースにして飲まれたりもしています。セネガルの人からは、バオバブのジュースはお腹を下しているときに薬のような役割をすると聞きました。また、その樹皮は加工して縄として使われるという話を聞きました。

強い太陽光にさらされるセネガルの大地では、建物の影や木陰は動物にとっても人間にとっても大切なものですが(建物の影で休んでいるロバをよく見かけます)、バオバブのしっかりとした根元の所で休んでいる人の光景を見たりもします。そしてバオバブの実は枝から長い茎で電球のように垂れ下がるのですが、村の人がそれを木の枝等を投げて器用に当てて取っているところを見たことがあります。人びとの生活に文字通り身近に存在している木であると感じます。

私の任地であったルーガ市周辺はセネガル北部に位置し、砂地が広がる大地なのですが、その砂地に大きなバオバブの木が沢山生えている様子を見ていると、アフリカだなあ、と感慨深く思ったりもしました。
バオバブの木のことを思い出せば、セネガルを思い出す、と言っても良い程、バオバブの木は私の中でセネガルのシンボル的な存在になりました。

知ることで広がる自分の器

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日本とセネガルは気候も文化も当然異なるところで、直行便は無く、乗継ぎ時間など全て含めると飛行機でも1日以上を要する距離にあります。私は正直なところ、セネガルに赴任になる前、セネガルについて知っていることはほとんどありませんでした。パリ・ダカールラリーのダカールという都市がある所、サッカーが強いこと、そんな漠然としたイメージだけしか持っていませんでした。

そんな私が2年間という時間をセネガルで過ごした後、日本に帰国して2週間少しが経過した今でも、今度は未だ少し日本が外国であるような気持ちがしています(笑)。お店の人などに「ありがとうございます」と言おうとしたところを、思わず「Merci」と、セネガルの公用語として話されているフランス語を言ってしまいそうになったりします(笑)。

考えてみると、セネガルに行く前、私にとってアフリカという場所は遠い所でした。日本では、町で自分より肌の色が濃いアフリカ系と思われる人を見るということもあまりなく、日常的に触れ合う機会もほとんどありませんでした。あまりに遠い故、偏ったイメージすら抱いていました。ただ「知らない」というだけで、正直少し「怖い」とすら思ってしまっていました。

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しかし、2年間をアフリカの国で過ごした今は、町でアフリカ系と思われる人を見ると、以前とは違う親近感のようなものを、ほぼ無条件に感じるようになりました。

考えてみれば、この世の中に様々な肌色や髪色の、様々な言葉を話す、様々な国籍や社会的・文化的背景を持った人たちがいることは至って普通のことであるのに、「知らない」というだけで自分の視点からのみ物事を見るというのは、とても寂しいことであると今は思います。○○系というカテゴリーすら、本当は要らないものかもしれない、と思います。

私は、セネガルの人たちの豪快なところ、懐の大きいところ、自分に誇りを持っていて、明るくてさっぱりとしているところ、踊りを愛しているところ(?!)等々を、素敵だなと思い、人間的な魅力を感じていました。そんな人間味と魅力を持った人たちと出会い触れ合えたことは本当に、この2年間の宝であったと、日本に帰国した今、改めて思っています。

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色々なものが溢れ出してしまってまとまらないのですが、、、終わりに、これまでこちらでの連載記事を読んで下さった方たちに、深く御礼申し上げます。そして、こちら、「アースガーデン」ウェブマガジンで、セネガルでの生活や、活動についてのあれこれを伝える場を与えてくれた、編集長の、しんちゃんこと葛原信太郎さん、本当にありがとうございました。この場を借りて、御礼申しあげます!

〈引用文献〉
サン=テグジュペリ作、内藤濯訳『星の王子さま〔電子書籍版〕』(2015、岩波書店)