フェスは自然に出会う最高のフィールド【ナチュフェスレポート・GO OUT CAMP / 豊洲野音CARNIVAL】

私たちは、これからの野外フェスティバルと環境教育をひとつのキャンバスに描く集まり、ナチュフェス東京ミーティングです。2015年のアースデイ東京で産声をあげて以来、持続的な社会の実現へ向けたアクションの模索を続けています。

既に多彩なゲストと参加者に、これからの自然、環境意識を表すコトバとデザインを探る「ナチュフェスCafe」に参加してもらい、盛況のうちにこれまで3回を開催しました。

そしてその一方で、野外フェスティバルを舞台に、その地域の自然に目を凝らし、身近な環境に思いを巡らす、そんなとりくみも始めています。

“野外”フェスティバルの楽しみ

全国各地でほぼ一年中行われている野外フェスティバル(フェス)。空の下で音楽を聞くあの開放感、たまりません。もしかしたらそんなフェスには、キャンプや朝日を見ながら飲むコーヒー、夜の焚き火も欠かせないよという人も少なくないはず。
きっとそこに自然がなかったら、フェスってこんなに楽しくなかったと思いませんか?

この記事ではそんな想いをベースに、これまでフェスの現場で広げてきた私たちの試みと発見を確認して、これからの可能性をさらに広げるきっかけにしたいと願っています。

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メインステージの裏には、シカが歩きリスがあそぶ森

フェスの会場は今やキャンプ場をはじめ、公園や埋め立て地など様々。音楽を聞いて、食事をして、寝る場所もフィールドの中。

もしそこが都心から離れたキャンプ場なら、たいがいはメインステージから歩いて2、3分の森でシカが闊歩し、リスが走り回っているのが当たり前なはずです。そして例えそこが都心の公園でも、フードエリアにある木の隙間でヤモリが獲物を待ち伏せ、ミツバチが必死に蜜を集めているでしょう。

フェスはそんな場所で過ごし、生活をするということでもあるのです。

@朝霧高原
@朝霧高原
@道志
@道志
@代々木公園
@代々木公園
@代々木公園
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インタープリター=自然を楽しむプロ

インタープリターという言葉を耳にしたことがありますか?

簡単に言うと、あなたと一緒に自然を楽しむ専門家のこと。実はそんなインタープリターが、あなたと自然がつながるお手伝いをする、そんなフェスもあるのです。

GO OUT CAMP vol.11

富士山朝霧高原のふもとっぱらで開催されたGO OUT CAMP vol.11。広大なキャンプ場にステージが立ち、アウトドアギアや手作りのクラフトが買えるブースが並びます。その一角に、子どもがめいっぱい遊べるキッズフィールドがありました。

会場の隣の森から切り出された丸太を使ったアスレチックや積み木があったり、焚き火でマシュマロやソーセージを焼いておやつにできたりと、子どももフェスを楽しむコンテンツが満載でした。

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ノコギリを持って森へ

ワークショップも盛りだくさん。中でもクラフトプログラムはこの場所ならでは。材料を自分で用意するところから始まります。まずはノコギリを持って森へ。

お目当ては、植えたスギの木がいい木材になるようにと、切り落とされた枝。お気に入りの形の枝を探して森の中を歩いていると、発見の連続。そこには動物の足あとやフンなど、動物がいた証拠だらけ。思いがけずここがたくさんの生きものが暮らしている場所だということに気づかされます。枝を探していたことを忘れてしまうような生きものとの出会いも。

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小学校以来ノコギリを触ったことがないというお母さんにも手伝ってもらって、枝をちょうどいい長さに切りそろえます。印象的だったのは「材料を森からとって来れるから参加しました。」といった声。
切った枝を持ってキッズフィールドに戻り、やすりで削って金具をつけて、完全オリジナルのキーラックが完成しました。

「さっそくテントサイトで使います。」や「ママに見せよう。」という声を残して、みんなテントサイトに戻っていきました。

自分でつくったキーラックを見るたびに、あの森を思い浮かべるかもしれませんね。

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フィールドで寝起きするフェスだからこそ

そして夜も森を歩きました。明るい昼からは一転して、そこには都心では体験することができなくなった暗闇が待っていました。ろうそくの灯りだけで歩くから、いつもよりも音や匂いに敏感になって、足の裏の感覚が研ぎ澄まされていくのがわかります。

森の中は一歩先も見えないほど暗いのに、見上げた空は明るく、木の隙間には月と満点の星。「最初は怖かったけど、大丈夫になってきたよ。」と参加してくれた小学生の声が聞こえました。「空がこんなに明るいなんて思わなかった。」とお父さんからも。

こんなことができるのも、フィールドで寝起きするフェスだからこそ。

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豊洲野音CARNIVAL

一方、東京で開催された豊洲野音カーニバル。豊洲の広大な埋め立て地で、2015年から始まった生まれたてのフェス。何より都心からのアクセスが良くて、夜はビルの夜景がきれいな好立地。

赤ちゃんと一緒に休憩できたり、授乳、オムツ替えもできるキッズエリアもあります。

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手の届く自然がある

豊洲に自然なんてない?いえいえ、都心の自然を侮るなかれ。
シカやリスはいませんが、触れることができる自然がそこにはあります。子どもたちは、飛び回るトノサマバッタを捕まえたり、無数のくっつきむしで遊んだりと、飽きることを知りません。

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材料はすべて捨てられるはずだったもの

ワークショップのうち、好評だったのが楽器づくり。音楽が身近にあるフェスだから、音を鳴らしたいですよね。つくったのは、「カズー」と音楽に合わせてリズムを刻む「カップス」の2種類。材料はすべて会場で使われたペットボトルです。

「カズー」は、声をアヒルの鳴き声のように変えちゃう不思議な楽器。
ペットボトルの他に、レジ袋や布屋さんでもらった布生地を巻いている筒芯などの材料はすべて捨てられるはずだったもの。

ペットボトルを上下に切り分け、飲み口部分をレジ袋を小さく切ったビニールで塞ぎ固定します。10cmくらいに切った布生地の筒芯を飲み口部分につなげて、首から下げる紐をつけたら完成。
できた途端に、みんな声を出して遊び始めました。

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生活に近いから体験を日常に持ち帰りやすい

もう一方の楽器作り「カップス」はペットボトルをコップ状にして、音楽に合わせてリズムを刻む遊び。まるでパーカッションのようです。ペットボトルを上下に切り分けてから、底側の部分にマスキングテープで思い思いにデコレーションしてできあがり。
リズムの練習をしてから、スタッフのギターに合わせてセッションしました。中にはスタッフと一緒に何時間も遊んでくれる子も。
材料とつくり方を聞いたお母さんから「家でもやってみよう。」や「ペットボトルでできるならいいよね。」とうれしい感想が聞かれました。
ゴミになっていたはずのものを使って、音楽を楽しみつつ環境を意識してみる。生活している場所に近いフェスだからこそ、体験を日常に持ち帰りやすいですよね。

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フェスだからできる体験がそこにはある

フェスに行くとだいたい、外で音楽を聞き、ごはんを食べ、遊び、寝る。つまりフェスの間はフィールドでの生活。

たいてい電気もなくて、季節によっては暑かったり、寒かったり。でも言い換えれば、自然を体で直に感じられる場所で暮らしているとも言えます。そんな環境で、朝から夜まで過ごすからこそできる体験が、フェスには必ずあります。

これからのフェスは、音楽や食事、買い物をめいっぱい楽しんだ後に、ちょっとだけ、そのフィールドに目を向けたり、環境について思いを巡らせてみませんか。そこにはきっと新しい発見が待っていますよ。次はフィールドで会いしましょう!

ナチュフェスミーティング
村上友和

村上友和

1982年生まれ。野生動物学を学ぶ中で環境教育と出会い、インタープリター(自然解説員)を志す。自然教育を専門とする、株式会社自然教育研究センターに入社し、現在は高尾ビジターセンターでチーフインタープリターとして勤務する傍ら、フェスを自然を楽しむ場所とすることを試みている。